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「眠る」にフォーカスした巡回展 近代美術館「眠り展:アートと生きること」へ行ってきた!見どころ・チケット情報・混雑状況など

こんにちは、美術館が好きなハナモリです。

今回は「東京国立近代美術館」で開催中の
様々な「眠り」をテーマにした作品を集めた「眠り展:アートと生きること」に行ってまいりました。


東西線竹橋駅から徒歩3分です。


眠り展:アートと生きること

「眠る」をテーマに作品を構成した企画展。
ルーベンス、ゴヤ、ルドン、藤田嗣治、内藤礼、塩田千春、森村泰昌など、古典から現代までの著名な作家の美術作品を一堂に見ることができる展覧会です。

作品形態も、立体、平面、映像、インスタレーションなど国内外問わず多種多様な作品が展示されています。

※2/23(火・祝)までの開催なので、ご興味のある方はお早めにご来館ください!

ハナモリ

「眠り」は「実際に眠る」以外に、
「認識しない=意識として眠る」、
「無意識化の可能性を探る=自我を眠らせる」、
「疑似的な死=眠る」など
様々な意味での「眠り」を取り上げています。


東京国立近代美術館、京都国立近代美術館、国立西洋美術館、国立国際美術館、国立新美術館、国立映画アーカイブの6館の美術館から作品を集めた「国立美術館合同展」の展覧会の第3弾です。

言葉をテーマにした合同展は珍しい

コンセプトがシンプルで一貫しているので、1点1点、キャプションの説明を読み込んで考えこまなくてもスラスラ見ることができました。

時代を超えて「眠り=人間の意思化以外の感覚」をテーマにした作品が多く、長年作家たちの研究テーマになっているところが興味深いです。

チケット情報・閲覧時間の目安・混雑状況など

チケット情報:
会場で当日券を販売しています。
ただ、来館日時を予約する日時指定券を事前に購入しておくとスムーズです。

閲覧時間:
●「眠り展」のみ 
ゆっくり見て、約1時間半~2時間程度

●「眠り展」+「常設展(フロア3階分の広さ)」+「コレクション企画展:男性展」の3展

午前中早い時間から行って、閉館時間までを目安にすると余裕が持てると思います。(たくさんある常設は若干流し見になってしましますが;;)

混雑状況:
日曜の正午から行って、待ち列なしで入館可能でした。
(当日券の券売所も、1人~2人程しか並んでいませんでした)

ワンフロア10人程度の混雑状況。

最終日近くは混雑が予想されるので、開館直後(10時~11時くらい)に到着するとあまり混まずに見ることができます。

会場 東京国立近代美術館 1F 企画展ギャラリー
会期 2020年11月25日(水)~ 2021年2月23日(火・祝)
開館時間 1,440円
観覧料(税込) 一般 1,200円/大学生 600 円
休館日 月曜

近代美術館「眠り展」 の公式HPを見る

「眠り」によって、あの世とこの世の世界を行き来する作家たち

17世紀~18世紀 ロマン主義時代

ゴヤ(1746-1828)は、当時の画家の最高峰であるスペインの宮廷画家として王宮に仕えていました。(本名:フランシスコ・ホセ・デ・ゴヤ・イ・ルシエンテス

版画《ロス ・カプリーチョスー理性の眠りは怪物を生む》
コウモリやフクロウは「無知」や「愚行」を象徴しています。スペインの宮廷画家として、スペイン社会の腐敗を案じたゴヤの個人的な悪夢を表していると言われています。

19世紀後半 象徴主義表現

19世紀後半になると、人間の内面や夢、神秘性などを象徴的に表現しようとする象徴主義表現が主流になり、ギュスターヴ・モローオディロン・ルドングスタフ・クリムトなどの作家が先駆者となって活躍していました。
当時、オーストリアやドイツでガソリン式の自動車が開発され、人々の暮らしがどんどん都会的で享楽的になっていくのに反発し、人間の内面世界に目を向けるようになったのが象徴主義表現でした。

19世紀~20世紀の象徴主義時代のルドン(1840-1916)
同時期に印象派の画家たちが外に出て光あふれる風景や人物を華やかな色彩で描く一方で、憑りつかれたように専ら非現実な夢想の世界の怪物を描いています。

20世紀 抽象絵画運動

20世紀になると、文学や芸術の分野において、その後につづく抽象絵画運動(アンフォルメルアクション・ペインティング)の先駆けとしてアンリ・ミショーの内面的風景をうたった詩やデッサンが芸術家たちに大きく影響を与えました。

アンリ・ミショー(1899-1984)
絵画制作において実験的に使用した幻覚剤の「メスカリン」の効用を利用して描いた《メスカリン素描》など叙情的抽象的な作品を残しています。

20世紀後半 コンセプチュアルアート

1960年代になるとコンセプチュアルアート運動(制作行為に意味を為さず、アイディアやコンセプトが最も重要視される)が始まり、本展で展示されている作品の形も少しづつ変わってきました。

1900年代~

河原 温(かわら おん)(1932-2014)の《デイト・ペインティング》は、毎日日付を黒いキャンバスに記録し、自分が生きた(生きている)記録の集積や、少しづつ増えていく数字から、毎日少しづつ死へカウントダウンしていることを感じることができる作品です。(モノトーンの絵画は死を想起させる)

荒川修作(1936-2010) ≪抗生物質と子音にはさまれたアインシュタイン≫(1958-59年作) 
セメント、綿、ナイロン、着彩、ポリエステル布、木綿、木、ほか(166.0 x 107.7 x 21.0 cm)

荒川修作さんは、「死なないために」をテーマに作品を制作している作家です。死という宿命を反転させようと模索して作成した棺桶だそうです。

こちらの作品は、物質感のぶつかり合いがすごくて展示会の中でもかなりインパクトがありました。
セメントでできた得体の知れない、腫瘍のような突起だらけの、膨れ上がって死んで、化石になった人間の肉体のようなオブジェが、つやつやの安っぽい紫のサテンのクッション材の上におさめられています。どこか、標本か何かのコレクションのようにも見えます。
ただかなり大きいので、横にあるとびくっとします。

河口龍夫(1899-1984)の《関係ー種子、土、水、空気》(1986-1987年作)は、1986年のチェルノブイリ原子力発電所事故の惨劇に触発されて制作された作品です。
黒いキャンバスに種や麦などの生命を埋め込んで一次保管し、発芽に必要な材料(土、水、空気)も並列して展示されています。「未来に芽吹くときを待つ眠り」という希望に満ちた作品でした。
(河口龍夫Webサイト)

ハナモリ

こういうオブジェクトの配置が大事なインスタレーションは、
展示の仕方で見栄えが大きく変わるので、センスが問われるところですよね・・


この作品は、テレビや写真でも事前に見ていましたが、生で見て展示空間ごと体感しながら見たときのほうがぐっときました。

小林孝亘(1960-)《Pillows》(1997年作)が印象的でした。
わたしは生死をテーマにした作品が好きです。(鬼滅の刃も、始終「死」を強く感じさせる作品なので好きです)

まくらは小林孝亘さんが繰り返し描かれているモチーフです。まくらは毎日人が使うものですが、この絵は人は描かずにまくらだけを描いています。まくらに残った痕跡から、「不在の存在」を感じるそうです。
何とも怖い作品です。たしかに・・・

ハナモリ

コンセプチュアルアート以降になってくると、
昔の時代の作品よりも、何かのモチーフを描いてもその寓意が結構ストレートにずどんと来るというか、より直接的にぐさっと刺さりますね。

2000年代~

今回の展覧会で特に印象に残った作品は、楢橋朝子(ならはし あさこ)(1959-)の《「half awake and half asleep in the water」シリーズより Miyajima, 2004》でした。

水面に沈むか沈まないかのギリギリの位置でシャッターを切り、生と死のはざまで見る風景(ここでの死は眠りのこと)を写した作品は、見ていると今にも気が遠くなりそうでムズムズするというか、でも意識を保たないと死んでしまう といったギリギリの精神状態を感じる作品でした。

饒加恩(ジャオ・チアエン)《レム睡眠》(2011年作)
台湾に出稼ぎに来ている18人の外国人労働者たちが見た夢の内容を物語った映像作品です。タイトルにある「レム睡眠」とは、身体が寝ていても脳は起きていて、記憶の定着や整理をする睡眠のことです。

3つのスクリーンで一人づつ順番に話し始めるのですが、初めは3人とも寝ている映像が流れ、しばらくするとその中の一人が起きて夢の話を語り、話し終わると再び眠りにつきます。その間、残りの2人は寝ています。一人が終わると、寝ていたうちの一人が起きて、また話しはじめるという不思議な演出の映像でした。

「ある日急にワケも分らず帰国していて、契約終了になっていた」「久しぶりに故郷に帰ると、みんな自分のことを忘れていた」「悪い予知夢を見て、実際にその後で父親が事故にあった」「死んだはずの親戚がみんな出てきた。夢の世界に死者が溢れていてとても怖かった。」など、心身を休めるために睡眠を取っているのに気持ちが全く落ち着かず、毎日あらゆる不安の中で生き抜いている辛い気持ちが伝わってきました。

ハナモリ

半分夢の中にいるような彼らの胸のうちや悩みを聞くことで、実際にその人たちの目の前にいる友人になって夢の話を聞いているような感じがして、
面識が無いのに親密な仲になったような気がしました。
不思議・・・。


「眠り」とは「疑似的な死」だと思います。
とくに昔の時代は今より科学も医療も発達していないので、死亡率の高い世の中でした。いつどこで不治の病にかかってしまったり、何かが起きて死んでしまうか分からない中で生きていましたから、眠ってしまうと二度と起きれない可能性も今より高いですし、辛い毎日の中で、夢の中だけは自由に平和な世界に逃避することができます。

現在でも、嫌になったり気持ちをリセットしたいとき「とりあえず寝る」というのは、今その瞬間から疑似的に死ぬことを選んでいるのではないでしょうか。
夢の世界は、無意識化の世界・疑似的な「あの世」「天国」と考えると、ちょっと恐ろしいです。

岡崎乾二郎先生の作品展示

「眠り」展の他に、今はなくなってしまった近畿大学のサテライト校:現代アート学校「四谷アートスタディウム」のメイン講師をされていた岡崎乾二郎先生の小作品がたくさん展示されています。
(ほんのすこしだけですが、わたしも一時期通っていました・・。)

2019年に愛知県の豊田市美術館で、岡崎乾二郎先生の大規模な個展が開催され、コロナ渦でアトリエで150点ほどの作品を制作され、その中から抜粋して20~30点ほどが展示されています。

F5?くらいの小さなキャンバスに描かれた、アクリルや透明アクリルの色鮮やかで美しい構成作品です。
岡崎先生の奥さんは詩人の「ぱくきょんみ」さんで、岡崎先生自身も言葉と造形や色彩を結びつけて制作されることがあります。
ちょっと、タイトルと作品が離れたところに展示してあって平行して見辛かったのですが、意図的に離して展示されているのだと思います。(先生の展示空間は計算されつくしているので)

美術評論家でもある岡崎先生は
数多くの著書を書かれています。

現代アートを制作するうえで、美術シーンの流れを把握するのは必須です。
(特に先生の授業では美術分析の勉強も必須でした・・)

先生おススメの著書、画集をご紹介します。

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まとめ
①コンセプトが分かりやすくて気楽に見れる
②色々な作品が体系的に見れて分りやすい

ハナモリ

シンプルなテーマで、いろんな種類の作品が歴代順に展示してあるので、とても見やすくて良かったです。


近代美術館は常設エリアが広く(3階に分かれています;)、いつも全部見れないまま終わってしまうのですが、
全部ご覧になりたい場合は、午前中から行って閉館まで見るつもりで行くと漏れなく見れそうです。
常設展は企画展毎に作品が入れ替わりますが、結構おなじみの作品がいつも展示してあるので、一度に無理せず数回に分けてみても良いと思います。

美術館は比較的ゆったりしていますので、コロナ渦のおでかけにもお勧めです。

最後までご覧頂き、誠にありがとうございました!!

ABOUT ME
紫木エリ
フリーでイラストレーターをしています。 前職はテレビ局在中のCGデザイナーをやっていました。 手書き風、似顔絵、可愛い系など色々なテイストの絵が得意です。 趣味は旅行、美術鑑賞。 最近のハマりはどうぶつの森です。